白昼夢、或いは全部勘違い

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BL is DOPE!! vol.5の記録

11/18、トークイベント「BL is DOPE!! vol.5」に参加(ただの聴衆なのだけど、参加という気持ち)してきた記録。私は5回目にして初。だってトーキョー、遠いんだもの。
これを読んでいる主に東京圏の漫画読みの方には、BLというジャンルの読者である無しに関わらず、ぜひとも足を運んでいただきたいイベントである。

概要
なんのこっちゃという人のために概要を記載しておく。
ニイマリコさん(ロックバンド HOMMヨのギターボーカル)とヒロポン先生のお二人がゲストとともに、テーマとそれに即した作品などをもとにお話する。
今回は「BLと暴力」で、ゲストはライターの田口俊輔さん。
田口さんはいわゆる「腐男子」ではないとのことで、どちらかというと「ゾーンの広い漫画読み」という印象だった。
ちなみに「漫画読み」という言葉はご存知だろうか。私の中では「漫画を読むスキルの高い人」を示すものであり、冊数、ジャンル、リテラシー、秀でているものはなんでもいいが、私の憧れは何か別の専門(カルチャーなり芸術なり学問なり)があってそれと照らし合わせて漫画を読める人だ。
(私は自分の属性と特性、育ちとか思春期とか思想とか、を土台に深読みする精神的コスパが悪い漫画読みだ)

今回のテーマは「暴力」。
メインとなるのは商業誌より以下3作。

コオリオニ(上) (BABYコミックス)

コオリオニ(上) (BABYコミックス)

にいちゃん (Canna Comics)

にいちゃん (Canna Comics)

おやじな!?千夏と巴の場合? (EDGE COMIX)

おやじな!?千夏と巴の場合? (EDGE COMIX)

2016年の商業BL作品の中で最高傑作と名高い「コオリオニ」がとにかく大好きで、大人気作家の異色作品(らしい、私はこれが初見)「にいちゃん」から受けた衝撃は重く、他の読者が何を考えたのか気になって仕方のなかった私は、はるばるお上りさんとしてこのイベントに足を運んだ。
ひとつは未読であり、未読のものにうまいこと言及できないので以下の感想では残念だが割愛する。興味はとてもあるので読みたい。

ちなみに、初読時の私の感想。
とにかく面白い漫画「コオリオニ」のこと - 白昼夢、或いは全部勘違い
ねぇ、愛を証明して? - 白昼夢、或いは全部勘違い

漫画のトークイベントとして
漫画のトークイベントに初めて足を運んだ。
例えば「萌え語り」と呼ばれるような、作品のどの場面が好きなのか、どのキャラクターがなぜ好きなのかを話し合うようなことは、オンオフラインを問わず積極的に行われているだろう。
ではなぜ、わざわざ「トークイベント」として公共とも呼べる空間で漫画の話をするのだろうか。
私はただ単に「萌え語り」をする友人すらもいないが、本イベントでは驚くほどに公的というか、内輪ではない人々が集まって語るに相応しい話題が飛び交っていた。
「コオリオニ」と、同じく梶本先生の「高3限定」にも漂う暴力への憤りであったり、特に「にいちゃん」に対してのゾーニングの問題であったり、共通する「普通とは何か」であったり。インターネットで議論するには難しいデリケートな問題もあったり。
ネットでの議論でもなく内輪の居酒屋でもなく、「トークイベント」でなければ到達できないものがあるのだと知った。

教養が欲しい
「優れた教養は人生を豊かにしてくれる」とは作中の台詞だが、今回「勉強になったなあ」と一番に思ったのは、オペラについてだった。
「コオリオニ」で引用される「ファウスト」の登場人物について、木戸・八敷に照らし合わせた上で本作の意図をより理解する知識を与えられたことは参考になったし、この作品を契機として「ファウスト」に触れもしなかったことを後悔した。
田口さんが、3作に関心のある人にオススメと紹介してくれたものは幅広くたどり着くのも難しく、私にどこまで手が届くかわからないが出来る限り手を伸ばすことをゆめゆめ忘れないようにと思った。
他の参加者の方も熱心に作品名のメモをとる空間は心地よく、豊かな教養で豊かな感性を人生を育もうとする人々の中にひと時でも身を置けたことは、それ自体が豊かな時間だったと思う。

怒り
参加者もご意見あれば、と3名が言ってくださり、私は挙手して「佐伯はね!発達がね!ちゃんと専門の支援が受けれたらきっとね!!でも田舎だし!!」とやたら興奮してしまった(反省している)。
休憩時間にも少しだが他の方のお話を聞くことができ、どの方もこれらの作品について思うところが色々とあったようでそれだけたくさんの人に何かを喚起させる作品に出会えたことも、それに惹きつけられた人の話を聞けたことも、とても楽しかった。
一番印象的だったのは「にいちゃん」に対して強い怒りを持って発言してくださった方だ。
誰かが、言って仕舞えばフィクションに対して強い怒りを持っている様を目の前で見たのは初めてのように思う。対面することで生身の怒りが伝わってくるような、空気が震えるようなあの怒りから「にいちゃん」という作品が読者に与える力を見せつけられたような気がした。

「コオリオニ」再考
下巻のラストについて「いや、わかるでしょ!素直に受け取る人、ピュア…」という発言があったが、私はどうやらピュアっピュアであり、あのとき驚きに震えていたことを白状する。
八敷の存在そのものがクスリのメタファーでは?氷の女王ってアイスだし、と提起されていたので、家に帰って考えてみたら、情報提供者ってエスだし、翔って「トぶ」だし、と色々なことが浮かんできた。
何度も読み返すたびに発見のある作品だが、自分だけでは気づかないことも当たり前だがたくさんある。読書会にも行ってみたい。

結びに
楽しいイベントであったことが、少しでも伝われば幸いである。
興味のある人は次回以降に足を運んで欲しいし、私は教養が欲しい。